TRACERY Lab.(トレラボ)

TRACERY開発チームが、要件定義を中心として、システム開発で役立つ考え方や手法を紹介します。

システム開発に役立つ『知識体系(Body Of Knowledge)』

TRACERYプロダクトマネージャーの haru です。

知識体系(Body of Knowledge)」と聞くと、「なにか難しそう」「専門家や一部の限られた人が読むもので、自分には関係ない」と思われる方も多いかもしれません。

でも実は、そのような人こそ知っておくと役立つのが『知識体系』です。

システム開発は、企画から要件定義、設計、実装、テスト、運用に至るまで多岐にわたり、それぞれのプロセスで異なる専門性が求められます。現場で求められるスキルを断片的に身につけるだけでは、全体像を見失いがちです。

そうしたときに役立つのが、「知識体系(Body of Knowledge)」です。

「知識体系(Body of Knowledge)」とは、ある分野における知識や技術、手法などを体系的に整理し、標準としてまとめたものです。

たとえば、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)やSWEBOK(Software Engineering Body of Knowledge)といった名称を耳にしたことがある方もいるかもしれません。

この記事で紹介する知識体系を、以下の表にまとめました。

略称 正式名称 読み方 主な領域
PMBOK Project Management Body of Knowledge*1 ピンボック プロジェクトマネジメント
BABOK Business Analysis Body of Knowledge バボック ビジネスアナリシス
REBOK Requirements Engineering Body of Knowledge リーボック 要求工学
SWEBOK Software Engineering Body of Knowledge スウェボック ソフトウェア工学
DMBOK Data Management Body of Knowledge ディーエムボック データマネジメント
SQuBOK Software Quality Body of Knowledge スクボック ソフトウェア品質

知識体系を学ぶことで、自身の知識や経験を整理・強化でき、専門性を深めることができます。

さらに、プロジェクトで、体系的な枠組みに沿って検討することでヌケモレや見落としのリスクを減らせます共通言語として活用すれば、関係者との認識のズレが減り、チームや他職種との連携も円滑になります

本記事では、システム開発に関わる代表的な知識体系を取り上げ、それぞれの特徴や入手方法やバージョンを紹介します。

PMBOK

PMBOK(A Guide to the Project Management Body of Knowledge:ピンボック)は、プロジェクトマネジメントの標準的なプロセス、用語、知識エリアを体系化したものです。

PMBOK第7版では、従来のプロセスや成果物中心の枠組みから、価値と成果(アウトカム)の創出を重視する原則主導型のアプローチへと刷新されました。

アジャイルやウォーターフォール、さらには両者を組み合わせたハイブリッド型手法にも柔軟に対応する内容となっています。

PMBOKの構成(目次)

  • プロジェクトマネジメント標準
    • 1. はじめに
    • 2. 価値実現システム
    • 3. プロジェクトマネジメントの原理・原則
  • プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)
    • 1. はじめに
    • 2. プロジェクトパフォーマンス領域
    • 3. テーラリング
    • 4. モデル、方法、作成物
  • 付属文書
    • 1. 第7版の貢献者
    • 2. スポンサー
    • 3. プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)
    • 4. プロダクト
    • 5. 『プロジェクトマネジメント標準』の調査と策定

作成団体

  • PMI(Project Management Institute)
    • 米国に本部を置く、世界的なプロジェクトマネジメント専門組織
    • PMP(Project Management Professional)などの国際資格制度を運営
    • ウェブサイト:https://www.pmi.org

入手方法・公式情報

最新バージョン(2025年7月時点)

PMBOK第7版:2021年8月リリース(英語版)

※日本語版は、2021年10月

BABOK

BABOK(Business Analysis Body of Knowledge:バボック) は、ビジネスアナリシスの知識体系を体系的にまとめたガイドラインです。

ビジネスアナリストが組織課題を特定し、ソリューションを定義・提案・実現するための標準的な知識とスキルを提供することを目的としています。

BABOKについては、以下の記事も参照してください。

tracery.jp

BABOKの構成(目次)

  • 1. 序論
  • 2. ビジネスアナリシスの主要コンセプト
  • 3. ビジネスアナリシスの計画とモニタリング
  • 4. 引き出しとコラボレーション
  • 5. 要求のライフサイクル・マネジメント
  • 6. 戦略アナリシス
  • 7. 要求アナリシスとデザイン定義
  • 8. ソリューション評価
  • 9. 基礎コンピテンシー
  • 10. テクニック
  • 11. 専門視点
  • 付録
    • A. 用語集
    • B. テクニックとタスクの対比表
    • C. 貢献者への謝辞
    • D. BABOKガイドVersion2.0からの変更点の概要

作成団体

  • IIBA(International Institute of Business Analysis)
    • 本部:カナダ
    • ビジネスアナリストのための国際的な非営利団体
    • 各種認定試験(ECBA, CCBA, CBAPなど)も運営
    • 公式サイト:https://www.iiba.org

入手方法・公式情報

  • IIBA公式サイトにて入手可能
    • IIBA会員はPDF版を無料ダウンロード可能
    • 非会員は印刷版や電子書籍を有償で購入可能
  • 日本語訳はIIBA日本支部が監修し、ITEC STOREにて購入可能

最新バージョン(2025年7月時点)

バージョン3(2015年4月)

※日本語版は、2015年11月

REBOK

REBOK(Requirements Engineering Body of Knowledge:リーボック)は、要求工学(Requirements Engineering)に関する知識体系を体系的に整理・定義したものです。

要求定義に関する技術・知識・プロセスを体系化し、ソフトウェアやシステム開発における要求工学の理解と実践を促進することを目的としています。

REBOKの構成(目次)

  • 0. はじめに
  • 1. 要求工学の基礎
  • 2. 要求工学プロセス
  • 3. 要求獲得
  • 4. 要求分析
  • 5. 要求仕様化
  • 6. 要求仕様の検証・妥当性確認・評価
  • 7. 要求の計画と管理
  • 8. 実践の考慮点
  • 基本用語対照表
  • 要求工学に関する標準・勧告・ガイドライン

作成団体

  • 情報サービス産業協会(JISA)
    • 「調査・研究」「技術開発」「人材育成」「国際交流」「行政提言」「表彰制度」など、多角的に日本の情報サービス産業を支える中核的団体
    • IT企業にとっては、業界標準の策定やスキルアップといった面で重要な役割を担っている
    • システム・インテグレータ、ソフトウェア開発企業、シンクタンクなど主要情報サービス企業が集まり、正会員は500社以上

入手方法・公式情報

最新バージョン(2025年7月時点)

第1版: 2011年6月

SWEBOK

SWEBOK(Software Engineering Body of Knowledge:スウェボック)は、ソフトウェア工学の標準的な知識体系をまとめた国際的なガイドラインです。

ソフトウェアエンジニアリングの主要な知識分野と実務スキルを体系化し、教育、資格認定、専門職育成の基盤を提供することを目的としています。

SWEBOKの構成(目次)

  • 1. ソフトウェア要求
  • 2. ソフトウェアアーキテクチャ
  • 3. ソフトウェア設計
  • 4. ソフトウェア構築
  • 5. ソフトウェアテスティング
  • 6. ソフトウェアエンジニアリングの運用
  • 7. ソフトウェア保守
  • 8. ソフトウェア構成管理
  • 9. ソフトウェアエンジニアリング・マネジメント
  • 10. ソフトウェアエンジニアリングプロセス
  • 11. ソフトウェアエンジニアリングモデルおよび方法論
  • 12. ソフトウェア品質
  • 13. ソフトウェアセキュリティ
  • 14. ソフトウェアエンジニアリングの専門的技術者実践規律
  • 15. ソフトウェアエンジニアリング経済学
  • 16. 計算基盤
  • 17. 数学基礎
  • 18. エンジニアリング基礎

作成団体

  • IEEE Computer Society(米国電気電子学会 コンピュータソサエティ)
    • 世界最大級のソフトウェア技術専門団体

入手方法・公式情報

バージョン(2025年7月時点)

第4版: 2024年10月

※日本語は第3版のみ(2025年7月現在)

DMBOK

DMBOK(Data Management Body of Knowledge:ディーエムボック)は、データマネジメントの知識を体系的にまとめた国際的なガイドラインです。

データガバナンス、データアーキテクチャ、データセキュリティ、データ品質、データモデリング、ビッグデータ、データサイエンスなどのトピックスを網羅しています。

DMBOKの構成(目次)

  1. データマネジメント
  2. データ取扱倫理
  3. データガバナンス
  4. データアーキテクチャ
  5. データモデリングとデザイン
  6. データストレージとオペレーション
  7. データセキュリティ
  8. データ統合と相互運用性
  9. ドキュメントとコンテンツ管理
  10. 参照データとマスターデータ
  11. データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス
  12. メタデータ管理
  13. データ品質
  14. ビッグデータとデータサイエンス
  15. データマネジメント成熟度アセスメント
  16. データマネジメント組織と役割期待
  17. データマネジメントと組織の変革

作成団体

  • DAMA International(Data Management Association International)

入手方法・公式情報

バージョン(2025年7月時点)

第2版:2017年(英語版)
2024年第二版改定新版(日本語版)

SQuBOK

SQuBOK(Software Quality Body of Knowledge:スクボック)は、ソフトウェア品質に関する知識体系を体系的に整理・定義したものです。

日本のソフトウェア品質分野で蓄積された暗黙知を形式知化し、品質技術の可視化と普及を図ることを目的としています。

SQuBOKの構成(目次)

  • 序章. SQuBOK ガイド概略
  • 1. ソフトウェア品質の基本概念
  • 2. ソフトウェア品質マネジメント
  • 3. ソフトウェア品質技術
  • 4. 専門的なソフトウェア品質の概念と技術
  • 5. ソフトウェア品質の応用領域

作成団体

  • SQuBOK策定委員会
    • 日本科学技術連盟(JUSE)と日本品質管理学会(JMQC)を中心に立ち上げられた委員会

入手方法・公式情報

バージョン(2025年7月時点)

  • 第3版(2020年11月)

最後に

知識体系は数百ページにおよぶ専門的な内容で、最初はとっつきにくく感じるかもしれません。しかし、実務経験を体系の枠組みで整理・位置づけることで、自身の専門性を深めることができます。

プロジェクトの検討においても、抜け漏れを防ぎやすくなり、意思決定の精度が上がります。

さらに、知識体系を共通言語として活用すれば、立場や職種を超えて認識を揃えやすくなり、チームの連携もスムーズになります。

現場で確かな判断と議論を行うための土台として、知識体系は大きな力を発揮するでしょう。

この記事を書いた人
haru

佐藤治夫。株式会社ビープラウド代表取締役社長。TRACERYのプロダクトマネージャー。エンジニアとして活動を始めて以来、モデリングを中心としたソフトウェアエンジニアリングを実践している。Xアカウント: https://x.com/haru860

*1:正確には、"A Guide to the Project Management Body of Knowledge"の略称