TRACERY Lab.(トレラボ)

TRACERY開発チームが、要件定義を中心として、システム開発で役立つ考え方や手法を紹介します。

『超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条』は、要件定義に取り組む全ての人に読んでほしい実践ガイド

シリーズ: 超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条

TRACERYプロダクトマネージャーの haru です。

システム開発における要件定義の重要性は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に伴い、これまで以上に高まっています。プロジェクトの大型化、複雑化、多様化が進む中で、要件定義はプロジェクト全体の方向性を明確にし、関係者全員が共通のゴールを共有するための不可欠な基盤となっています。

要件定義を効果的に行うには、ビジネス側と開発側が協力し、互いの視点や目的を共有することが不可欠です*1。たとえば、要件を定義する際には、開発側がシステムの技術的な制約を理解しつつ、ビジネス側が求める成果を具体的に示す必要があります。このような協力体制がなければ、要件の齟齬やプロジェクトの遅延を招くリスクが高まります。

では、ビジネス側と開発側は具体的にどのように協力すればよいのでしょうか?

その指針として参考になるのが、『超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条』です。

本記事では、『超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条』の概要を説明します。

超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条とは

『超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条』は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2010年に発刊したガイドラインです。

『超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条』は、IPAのサイトにPDFで公開されています。

実務に活かすIT化の原理原則17ヶ条〜プロジェクトを成功に導く超上流の勘どころ〜

発刊から15年近くが経過した現在でも、その原理原則は普遍的であり、現代のシステム開発においても十分に通用する内容となっています。

『超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条』は、発注者と受注者がお互いの役割と立場を認識し、協力してプロジェクトを成功に導くための具体的な指針を提供しています。また、『発注者=ビジネス側』、『受注者=開発側』と読み替えることで、一社内のプロジェクトにも活用できます。

超上流とは

超上流とは「事業や業務検討の始まりから要件定義までの工程*2」を指します。V字モデルにおいては、企画および要件定義(業務要件定義、システム要件定義)のフェーズに相当します。

超上流とは

17条の原理原則一覧

17条の原理原則は、以下のとおりです。

  • [1] ユーザとベンダの想いは相反する
  • [2] 取り決めは合意と承認によって成り立つ
  • [3] プロジェクトの成否を左右する要件確定の先送りは厳禁である
  • [4] ステークホルダ間の合意を得ないまま、次工程に入らない
  • [5] 多段階の見積りは双方のリスクを低減する
  • [6] システム化実現の費用はソフトウェア開発だけではない
  • [7] ライフサイクルコストを重視する
  • [8] システム化方針・狙いの周知徹底が成功の鍵となる
  • [9] 要件定義は発注者の責任である
  • [10] 要件定義書はバイブルであり、事あらばここへ立ち返るもの
  • [11] 優れた要件定義書とはシステム開発を精緻にあらわしたもの
  • [12] 表現されない要件はシステムとして実現されない
  • [13] 数値化されない要件は人によって基準が異なる
  • [14] 「今と同じ」という要件定義はありえない
  • [15] 要件定義は「使える」業務システムを定義すること
  • [16] 機能要求は膨張する。コスト、納期が抑制する
  • [17] 要件定義は説明責任を伴う

この中で、私が好きな原理原則は、「表現されない要件はシステムとして実現されない」です。

最後に

要件定義を成功させるためには、ビジネス側と開発側の協力が不可欠です。その際、双方がお互いの立場や役割を正しく理解することが重要です。この相互理解を支援するうえで、『超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条』は非常に有用です。

この書籍に示されている原理原則や行動規範を日々の業務に取り入れることで、要件定義をスムーズに進めることができるでしょう。

要件定義に取り組むすべての方に、ビジネス側・開発側を問わず、ぜひお読みいただきたい一冊です。

この記事を書いた人
haru

佐藤治夫。株式会社ビープラウド代表取締役社長。TRACERYのプロダクトマネージャー。エンジニアとして活動を始めて以来、モデリングを中心としたソフトウェアエンジニアリングを実践している。Xアカウント: https://x.com/haru860